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秋風包む、帰り道

 

近鉄郡山からJR郡山まで

ほろ酔いの二人は手を繋ぎ、フラフラ「幸せ」と歩いていく

 

細い道は僕が君の後ろを歩くよ

犬みたいに何度も振り返り笑う君 大丈夫、ちゃんといるから

 

電車に乗るとすぐ眠ってしまう君

二杯でそんな酔えるのがうらやましい

さっき食べたもんじゃ焼きの匂いが少し残る 頭を撫で、肩に抱き寄せた

 

君の最寄りの駅に着いた

なのに無理して二軒目の居酒屋を探してる

「もうお母さんが心配するから帰ろう。僕が責任を持って家まで送るからさ。」

「じゃあ、鳥貴族でいいからもう一軒だけ行こう?」

「いいよ。行こうか。」

 

結局一杯だけ 嗜んで帰路に着いた

タクシーを拒む君、それならば片道 4キロ歩いて帰ろう

 

真っ暗で何もなくて少し怖い道

やたら坂道が多くて、でも嫌いじゃない

だってこの町が君を今まで育ててくれたんだ ありがとう

 

鈴虫ざわめく秋の夜に

僕らは多分、同じような気持ちで歩いてる

未来とか難しい事はさておき 二人の影は確かに一緒に進んでいた

 

「君の笑顔は僕が守るよ 昆虫以外なら任せとけ。」

かっこよくないプロポーズをして

送り届けたんだ 何より愛しい君を

 

愛する気持ちがでかくなるほど

終わりの時がチラつき心を蝕んでく

怖いよ、それでも君といたいから

終わりの後に始まる物語をイメージした

 

君の最寄りの駅に着いた

ホームで今日を思い出し、ニヤニヤと笑ってる

からっぽの財布に入れた二人の

写真を眺め、加茂行きの電車を僕は待っている

また鳥貴族でいいから二人で飲みに行こう

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