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「おやすみ」

 

冷蔵庫の余り物で 適当にご飯を作ったよ

どうせ食べてきただろうから

いらないなら残してよ

 

「ありがたくいただきます。」

酒臭い息を吐くあなた

洗い物はちゃんとしといてね

明日も早いからもう眠るね

 

おやすみ

たまにはどこかへ 連れて行ってほしいけど

あたしは言えずに 毛布に包まるだけ

録画したテレビを見て笑う声

おやすみ

嫌いになっても知らないよ 油断しないでね

大きな音で 食器を洗う音

うるさいな 眠れないじゃない

 

朝起きたら またリビングで

口を開け寝ているゴミ

案の定 キッチンはぐちゃぐちゃの大惨事

 

苛立ちをメイクで隠して

大げさにドアを閉めるあたし

どうせ今日も飲みに行くんでしょ

あたしも誰かと飲みに行こうかな

 

土砂降りの雨の中で あたしは仕事へ行く

どうせ明日も雨は止まないから

あれだけ楽しみにしていたのに

お祭りは中止だろうなぁ 何もうまくいかない

ため息の音は 雨音で消えるから

大きく息を吐き出す

 

どうせ一人だから適当にコンビニで

パスタだけ買って重い玄関を開ける

 

おかえりってあなたが言う テーブルには下手くそな

料理が並んで してやった顔がある

なんの記念日でもない こんな日に

「たまには。」ってあなたが言う 嬉しく泣き出しそう

単純なあたし ずる賢いあなた

私たちは大丈夫だよね

 

おやすみってあなたに言う

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